鋭い眼差しと保健室

実際のものとは全く違うのだけれど、何やら実家。
夏。「ただいまぁああ〜あっつー」と言いながら帰宅したうちは、鞄を投げ捨てる様に玄関へ置く。少し身軽になった体で二階の部屋へ走って行くと、入室するやいなや着ていた衣服を一気に脱いだ。その足で浴室へ直行。限りなく水に近い温度でシャワーを浴び、汗を洗い流す。むちゃくちゃ気持ちいい。頭からシャワーをかぶり、顔面を流れる水滴を「ぷはぁああ!!!」と手で拭った先に見えたものは…
授業真っ最中の学校の教室だった。
浴室の窓と、学校の教室の窓が、目と鼻の先。こちら側→窓全開。暑いもん。浴室だもん。学校側→窓全開。暑いもん。授業に集中できなくなるもん。
教室の中の8割近くの人がこちらを見ている。完全にフリーズしたうちは体を隠す事も忘れていた。我に返った途端、バスタオルがどーしたとか言ってる間も無く浴室を飛び出した。怖くなって自分の部屋で小さく丸まった。「あんなに沢山の人に全裸を見られたんだ。もう恥ずかしくて外出もできまい!!」そう思って泣きそうになった。すると何やら外が騒がしい。部屋の窓からそっと覗くと…学校の校庭をさっき教室にいた生徒さん方がみんなで歩いている。しかも皆口々に「今のは大変な出来事だ!!」「○○先生に報告しに行かなければ!!」等と言っている。え?なに?全裸の女がシャワー浴びてたって事件?大変だ。どうしよう。逮捕されるんだろうか。
気が付くとうちは服を着て、自分が以前通っていた小学校に向かって歩いていた。辿り着くと迷う事無く真っ直ぐ保健室へ。うちが小学生だった頃から勤めている先生がそのままで居た。「先生!!!」うちはそう言って涙目になりながら先生に一部始終を伝え、今後どうしたらいいか分からないと嘆いた。先生は悩む様子も無く「何か悪い事でもしたのか?違うだろ?ただ少し間違えただけだ。大丈夫。みんなすぐ忘れるって。」と背中をさすってくれた。
あーそうか。どうでもいいことなんだ。ただ今そこにうちが居ただけだ。先生に話せてよかった。

でも目が覚めてから…先生の顔が思い出せない。誰だったんだろう。