いやぁ怖かった。

実家の仏間に寝ていた。いつの間に寝たのか記憶が無いので起きてから暫く考え込んでいた。「起きたか?」と祖父に話しかけられた。返事をするかしないかのうちに太めの鉛筆と荒いゴザの様なものを手渡された。祖父の手にも同じ物がある。訳も分からず受け取った瞬間、激闘が幕を開けた。数学の問題を4つ解かなければ怪人に襲われるのだ。諦めた奴に待っているのは『死』見た事も無い大きな鎌や鉈を振り回し、その危機的状況の中問題を解いていくのだ。怪人の凶器に当たらない様に上手く交わしながら。只でさえ難しいのに問題どころではなかった。『やらなきゃやられる』問題を一つ解く毎に怪人の勢いが鈍くなってくる。こちらが問題を解く事が彼等にとってはダメージの様だ。家を隅から隅まで使って逃げ回った。問題が全て解けた瞬間、怪人は消えて居なくなる様なのだが、どうしても最後の1つが解けない。折角3つ問題を解いたダメージを怪人が受けているのに、最後の1つでモタモタしていたら怪人の体力も回復する。そして今まで解いた3つの問題がまたひとつ、ふたつと新しい問題と摩り替わる。つまり、一気に4つ解かなければ、振り出しに引き戻されるのです。もう問題と向き合っていてはいずれ殺されると思い、2階の窓から逃げた。走りながら振り返ると家から怪人が出て来ようとしているのが見えた。
実家の前の通りを少し走ると中華料理屋が開店した直後くらいだった。入り口近くに小さな女の子。店の奥に母親にしては若くて綺麗な女性。女性はお店の事に追われ流しで忙しそうに手を動かしている。女の子は誰にもかまってもらえないのか、一人玄関でうさぎのぬいぐるみと遊んでいた。『助けて欲しい』とその子に話しかけると母親らしき女性の所へ何か話しに行った。只それだけの行為なのだが何故か『やばい』と感じた。女の子はあの怪人と繋がっている。かくまって置く振りをして怪人に居場所を教えるのだ。女の子が戻ってくる前にその場所から離れた。お金も無いし、携帯電話だって持って居ない状況。友達の所へ行こうかとか、実の父親の実家を訪ねようかとか色々考えたが、この街がヤヴァイんだきっと。誰に頼っても最終的にはあの怪人に報告されるのだ。兎に角行けるだけ遠くへ行くしかない。誰にお金を借りたのか、鉄道に乗っていた。何処だか分からないけど、栄えている街に降りた。
平和だ。全然平和だ。しばらくすると、葛西の駅前によく似た場所に居た。仲良しの友達も何人か居て、話しかけて来てくれた。さっきまでの緊張感が一気に無くなった。今までの事を話した。皆理解してくれた。怖かったんだ。安心感から喋り続けた。
『そうかそうか』と友達に宥められて目が覚めた。